この家に足を踏み入れた瞬間、まず目に入るのは木枠の存在。
主張しすぎることなく空間の輪郭をやさしくなぞり、住まい全体に落ち着いた秩序をもたらしています。

木が描くフレームは、空間を区切るためではなく、心地よくつなぐもの。
今回のリノベーションは、「住まいのリズムづくり」がテーマです。
家中に巡る、やさしい輪郭
この家は、あちこちに木枠の存在が息づきます。
時にはキッチンスペースの輪郭をやさしく縁取り、空間を静かに整えます。

時には天井へと視線を導き、部屋に心地よいリズムを生み出します。
キャットウォークへと続く木枠も、暮らしの延長に溶け込みました。

部屋の仕切りには、壁ではなくフレームとガラスを。
光や気配をほどよく通しながら、空間同士をゆるやかにつなぎます。

役割は違っても、木枠が担うのは同じこと。
空間に輪郭を与え、全体をひとつにまとめること。
主張しないからこそ、美しさが長く残ります。
タイル素材を引き立てる、静かな設計
キッチンにあしらったタイルは、色も柄もあえて控えめに。
調理の合間にふと目に入るタイルの表情は、光の入り方や時間帯によって変化します。

一枚一枚の質感が引き立つのは、周囲を囲む「木」がやわらかな境界を描いているから。
設備としてのキッチンではなく、空間の一部としてタイルが息づく設えです。
光をやさしく通す扉
空間を仕切るのに選んだのは、透明ではなく、すりガラス。
視線は遮りながら、光と気配は通す。
その曖昧さが、暮らしにちょうどいい距離感を生み出します。

アクセントカラーの扉に収められたすりガラスは、空間の表情を変える装置です。
ガラスの模様が少しだけ光の風味を変え、家の隅々まで届けます。
飽きない理由は、静かな美しさ
時間とともに深まる住まい。
流行に寄りすぎないこと。
強い個性を押し出しすぎないこと。
木枠のラインと素材の設えが、この家を「長く愛せる場所」にしています。


暮らしが重なり、傷や色の変化さえも、家の表情になっていく。
未来までを見据えたリノベーションが完了しました。










