設計がはじまる前、施主様が見せてくださった一枚のインスピレーション。
赤みを帯びたヴィンテージブラウンと、柔らかく寄り添うオフホワイト。
その色合わせには、時間を経たものだけが持つ深みと、どこか艶めくような色気がありました。

「この質感を、この佇まいを、住まいの中に」
その願いを胸に、今回のリノベーションが静かに動き出しました。
ヴィンテージブラウンが主役になる空間づくり
求めたのは、「あのヴィンテージブラウンが似合う家」です。
本物の木が持つぬくもりや陰影を大切にするため、あえてシート貼りの建具は使いません。
反対に、木の存在感をしっかり宿す、メーカー製のドアを選択しました。

クローゼットには、クラシカルで趣のあるルーバードアを。
扉を開け閉めするたび、ヴィンテージの空気がふわりと漂います。
静かに馴染む、「シンプル × モノトーン」のキッチン
キッチンは主張しすぎず、しかし確かな存在感を放つデザインに。
天板やパネルの光沢を抑え、グレータイルとの相性を第一に考えました。

どんなヴィンテージ家具を置いても調和が崩れないよう、余白を残した「控えめな美しさ」を意識しているのもポイント。
結果、美しいモノトーンの装いにまとまっています。
日常の景色の中に、そっと品の良い影を落とすキッチンに仕上がりました。

素材をつなぐ、小さな工夫も
玄関土間からダイニング・キッチンへの空間にも工夫が。
空間の境界に「線」を引かないよう、あえて見切材を使わずにタイルを一続きにしました。
自然な広がりが生まれ、空間に静かな統一感が漂います。

リビングと寝室にはタイルカーペットを採用。
将来DIYでの張り替えも可能です。
異なる素材を結ぶ見切り材には真鍮をあしらい、わずかな高さの違いも美しくフラットに。
表に現れない部分にこそ、緻密な心配りが息づいています。
部屋のテイストに合わせた部品選び
スイッチやコンセントには、空間全体のトーンに寄り添う「Panasonicクラシックシリーズ」を採用。
たった1つの部品でも、世界観を大切に選び抜きました。

施主様が用意されたブラケットライトがリビングに灯ると、空間の温度が一段と深まります。
今後は、カーテンボックス内の間接照明やキッチンのペンダントライトも活用予定。
さらに「暮らしの光」が重なっていく未来が見えてきます。


色、素材、光。すべてがヴィンテージの深みへとつながっていく
ひとつの色を大切にすることは、ひとつの世界観を丁寧に紡ぎ続けることでもあります。
今回は、赤みを帯びたヴィンテージブラウンを軸にしたリフォームの事例。
素材と光、そして心づかいが優しく溶け合い、「時を重ねる美しさ」を宿す空間になりました。

落ち着きと色気が静かに息づく、大人のためのヴィンテージスタイルの住まい。
ここからまた、新たな時間が刻まれていきます。










